MESSAGE

 この度、景域計画は2024 年4 月2 日に10 周年を迎えることができました。10周年を迎えることができたのは、関係者皆様の多大なるご支援の賜物であり、心より感謝申し上げます。

 2014年の設立時は、当時以前の2008 年に生物多様性基本法が施行され、2010 年には生物多様性条約締約国会議(COP10)が愛知県で開催される等、国内外において生物多様性の保全が広く社会課題として認識されてきました。また、2011年には、東日本大震災が発生し、自然再生エネルギーが見直され、バイオマスエネルギーなどの地域の自然資源を持続可能な方法で利用することが求められてきました。

 自然環境が持つちからを総合的にとらえた新しいランドスケープの創造が求められていると強く感じた時代でした。また、これらの新たな課題にこたえる具体的なプロセスの1つとして会社を設立しました。

 その後、国内外の環境動向としては、2015 年に、2030年を達成期限として持続可能な開発目標(SDGs)が国連総会で採択され、2016 年には気候変動に関するパリ協定が発効されました。2020 年からは、わが国において、2050 年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする脱炭素社会の実現を目指すことを宣言しています。

 さらに生物多様性に関する動向としては、2022年に生物多様性に関する世界目標である「昆明・モントリオール生物多様性枠組」が採択され、「ネイチャーポジティブ」に向けて2030 年までに生物多様性の損失を食い止め、反転させ、回復軌道に乗せる方向性が明確に示されました。自然保護のみならず、空間計画の策定と管理の重要性や、生態系の回復(自然再生)、民間等の取組により保全が図られている地域等(OECM)のとりこみによる30by30等の自然再興の方向性が強く打ち出されています。

 生態系の構成要素であり、二酸化炭素を吸収する植物やそれをとりまく自然環境を取り扱うランドスケープ分野においても今後、生物多様性の保全や脱炭素に向けた空間計画や設計を、確かな技術や良質なデザインをもとに展開していくことが課題になると考えます。弊社においても2023年、自然共生サイトの初めての認定地122カ所のうち、企業緑地の2カ所について環境設計、自然環境モニタリング調査等を通じて関わり、認定に貢献しています。 また、国内の観光動向としては、2016 年には、「明日の日本を支える観光ビジョン」が策定され、国立公園において「国立公園満喫プロジェクト」が始動しました。弊社においても先行的、集中的に取組を行う8ヶ所の国立公園のうちの2つに関わりました。

 伊勢志摩国立公園の横山展望台では、英虞湾を望む上質でゆっくりとくつろげる空間形成に設計を通じて貢献することができました。2014 年に国立公園に指定された慶良間諸島国立公園においては、島内の海域利用やサンゴ礁生態系の保全等に向けた国立公園としての利用基盤の整備に深く関わり、貢献することができました。

 ランドスケープと自然環境を中心とした計画とデザインの専門職集団である景域計画では、これらの社会課題を解決していこうとする理念を、真摯で熱ある姿勢で、具体的なかたちとして社会に還元することで今後もさらに貢献していきます。また、この節目の10周年にあたり、一層の社会への貢献をはかり、飛躍を目指していきます。今後とも、変わらぬご支援の程よろしくお願い申し上げます。


八色宏昌
景域計画株式会社 代表取締役
八色 宏昌