田貫湖富岳テラスは、令和6年4月13日にリニューアルオープンした静岡県富士宮市に位置する田貫湖畔の富士山を望む展望テラスです。リニューアルは、テラスの周辺の園路やエントランス等の園地において行われました。展望テラスの前方には、入り江地形の田貫湖畔が広がっており、湖面の波が立ちにくく、静寂な自然に包まれています。ここからは、左右対称に整った美しい富士山の山頂に太陽が昇る瞬間、ダイヤモンドのように輝く「ダイヤモンド富士」や静寂な田貫湖の水面に富士山が上下反転した形で映り込む「逆さ富士」を望むことができることから富士山を含めた国立公園の魅力を存分に堪能できる代表的な眺望地点となっています。
 この整備では、事業主である環境省において、観光立国推進閣僚会議による政策パッケージ及び富士箱根伊豆国立公園満喫プロジェクトステップアッププログラムに基づき、インバウンドの本格的な回復に向け、国立公園の魅力を満喫できる空間を創造することが課題であったことから、わが国を代表するこの優れた眺望地点の景観や空間、富士山への眺望のさらなる磨き上げを図ることが求められていました。また、富士山への利用の集中を避けるため、富士山周辺地域の利用拠点に利用者の分散化を図ることも求められていました。
 これらの背景から、テラスの設計では、富士山への眺望をさらに向上させるため、広域の眺望分析をもとに、テラスの角度を既存施設より4°北側にふることで真正面に富士山山頂を望むようにしました。また、湖面の体感を向上させ、「逆さ富士」の魅力がよりダイレクトに利用者に伝わるようにテラスの高さを既存施設より30cm下げました。さらに、多くの利用者がゆっくりとリラックスして眺望や星空を楽しめるように、背中をもたれかけることができる地場産の富士ヒノキ材(小節)を用いた幅の広いスロープ状の木製デッキを設けました。柵等の施設はシンプルで雑味の無いものとすることで空間の上質化を図り、これらの整備により滞在時間の確保と満足度の向上を目指しました。テラスの配置は、園地全体の景観調和とユニバーサルデザインを考慮して、陸側の斜面地形と一体としました。
 インバウンドの本格的な回復に向けては、利用者のSNS等の情報発信を促進するため、景観に配慮し、抜け感のある形状と高さを抑えた地点名を示したモニュメントを設置することで視対象である富士山を望むことができる当眺望地点の英語名をSNS等を通じて広く伝えて頂くことを狙いました。
 エントランスや園路の設計では、分かりやすいエントランス空間のしつらえとして、エントランスから展望テラスまでの区間の既存植栽木や実生木を選択的に伐採・剪定することで、エントランスから展望テラスへの期待感の醸成と、奥へ誘う誘導効果を期待しました。さらに、富士山周辺に自生する通称フジザクラ(正式名称マメザクラ(Cerasus incisa))などの彩りのある樹木を移植・保存し、土留めには富士山山域から採取される富士黒石(大沢石)の空石積みや県産材を用いた土留め木柵などの地域産の自然素材による施設でおさめ、四季を感じる自然と調和した散策路としました。
 また、傾斜のある地形の中、景観との調和を考慮して既存のスロープデッキから、自然地形を模した造成園路を設け、エントランスからテラスまでの間をユニバーサルデザインとし、キッチンカー等のアクセスが可能な園路とすることでテラスにおけるイベント時に飲食の提供が可能となりました。
 施設の夜間利用では、安全を確保し、自然環境の夜の風情を楽しむことができるように園地内で完結した太陽光発電による自然再生エネルギーによる照明を導入し、脱炭素化を図り、宿泊施設や湖面、星空への光漏れの影響を抑えた照明配置と設備とすることで自然公園の環境との調和を目指しました。
 リニューアルオープン後は、地域の食や食材を提供する地産マルシェやスパ体験などがイベントとして開催され、隣接する休暇村富士等においても展望テラスがPRされるなど、宿泊者を含めた来訪者が地域の自然と風景、食などを一体的に楽しんでいただける富士箱根伊豆国立公園の利用拠点として多くの方々に活用されはじめています。


- photo PEP PHOTOGRAPH -
田貫湖富岳テラスの画像
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