雲ノ平は、中部山岳国立公園の最奥部、標高2,600mの黒部源流域に位置し、人里からのアプローチの遠さから「最後の秘境」とも言われています。その貴重な環境や美しい景観を求めて、年間1万人を超える登山者が訪れています。
 当該地の登山者は、山頂を目指すだけではなく、森林限界を超えた草原に点在する池塘やハイマツ等から構成される庭園のような風景、さらに日本百名山に指定されている水晶岳、鷲羽岳、薬師岳等の北アルプスの代表的な山岳景観を探勝する登山体験を目的に来訪しています。
 一方、多くの登山者が入域することで、登山道の複線化、植生の踏み荒らしによる荒廃等、自然環境への影響と景観の変化が現在も引き起こされています。さらに近年は、異常気象による登山道周辺の荒廃の加速や、コロナ禍等の影響から山小屋の経営環境の不安定化も進行し、従来のあり方では対応しきれなくなっているため、新たな協力体制の確立が課題となっています。
 雲ノ平では、荒廃した植生の復元活動を2008年より3ヵ年(一次)、2012年より3ヵ年(二次)、2015年より3ヵ年(三次)、雲ノ平山荘と東京農業大学の共同研究を林野庁がバックアップする形で実施されてきています。一次の3ヵ年では、日本庭園および雷岩周辺の面的に広がる裸地を中心に植生復元工を実施しています。
 弊社では、2020年から植生復元事業に参画し、2020年には、雷岩等の5地区における約119の植生復元箇所の施工箇所ごとに複数枚の写真撮影を一元管理し、森林管理署、東京農大、雲ノ平山荘で共有することを目的に施工履歴等をデータベースに登録しました。
 また、2021年には、環境省の支援のもと、主に雲ノ平山荘が維持管理に携わっている登山道(木道2,086本)の現状を調査・評価し、今後の管理のための図面と台帳を作成しました。さらに、雲ノ平高山帯植生復元を検証することを目的に、これまでの活動を基にした植生復元に関する基本的事項、山岳環境の維持に関する課題を整理し、方針を示しました。
 2022年には、これまで実施したモニタリング箇所のうち今後、継続的にモニタリング調査を実施する箇所の抽出、植生復元の改善箇所の抽出や新規実施箇所について検討を行いました。同年には、これまでの活動を発展させるため、登山道の整備・維持管理の活動等を行う一般社団法人雲ノ平トレイルクラブが設立され、当団体との協力関係を継続しています。
 2023年には、関係機関である林野庁、富山県、富山市、環境省(オブザーバー)、学術機関である東京農業大学、雲ノ平トレイルクラブの参画により中部山岳国立公園雲ノ平地区自然体験活動促進協議会が6月に発足しました。
 本協議会では今後多様な団体の参画も視野に入れて当該地区の自然環境や自然景観の保全に関連する自然体験活動を情報共有しながら進めており、弊社も当協議会に参画し、継続的に持続可能な山岳環境の保全に貢献していきます。

場所:富山県富山市
雲ノ平高山帯植生復元検証事業-林野庁富山森林管理署


参考HP
一般社団法人雲ノ平トレイルクラブ
https://kumonodaira-trailclub.com/

富山市(雲ノ平地区自然体験活動促進協議会)
https://www.city.toyama.lg.jp/business/nourin/1010637/1014424.html
雲ノ平高山帯植生復元検証事業の画像
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