PHILOSOPHY

IDEA
理 念

 景域計画は生命の基盤となる生物多様性が保たれた調和のある風景と地域を次の世代へ引き継ぐことを使命としたランドスケープと自然環境を中心とした計画とデザインの専門職集団です。
 私たちは、地域のランドスケープと自然環境の独自性をかたちづくる地域の地史、歴史、文化、正業、自然等の地域の真正性(Authenticity)を見きわめる力を持ち続け、普遍性のある計画とデザインの提供を通じて、地域を大切に思われる多くの方々が満足されることを目指しています。良質なランドスケープと自然環境を目に見えるかたちで地域にお届けします。


ATTITUDE
プロジェクトへの向き合い方

 私たちは、自然環境等にかかわる社会課題に対して最適解を求めるため、クライアントや地域の市民とともに伴走し、ランドスケープを中心としたプランナー、デザイナー、エンジニアの各専門職の社内協働や関係する社外の専門職との横断的な協働によってプロジェクトに向き合っています。
 計画の段階では、プロジェクトの目的に向けた方法や手順等の道筋をたてて示し、実現可能性や妥当性、合意形成等がプランナーに求められます。設計・デザインの段階では、目的物に対して必要な機能や特性を考慮し構成を考えることや、形・色・配置などを設定し、これらを通じて高付加価値化を図ることがデザイナーに求められます。
 また、地域を考慮した自然素材、人工素材、構造物等のもつ美しさを際立たせる審美性や、もののおさまり等の道理や論理に沿っている合理性、利用や環境、構造等に関する機能性を発揮していくことが大切です。

 これらの計画と設計・デザインの基礎には、課題に対して理論を実際に適用する方法や手段をもつ確かな技術が必要です。私たちは、これらの各段階で求められる職能に対して真摯に応えうる専門職集団を目指しています。
 確かな技術は良質な計画とデザインを生み出します。優れた計画は、良質なデザインを展開するための基礎を育み、良質なデザインは共感を生み出します。計画、デザイン、技術の好循環を私たちは創造し、その成果を社会に還元します。


TECHNOLOGY
技 術 哲 学

NbSとランドスケープ

 「自然に根ざした解決策」1)であるNbS(Nature-based solutions)が着目されています。NbSは、自然を通じて環境、社会、経済の便益を同時にもたらそうとすることであり、多様な社会課題に対して、自然の持つ回復性や費用対効果の利点を活用していくという共通の視点があります。
 ランドスケープ分野においても、NbSのアプローチとして、生態系を基盤とした気候変動適応・緩和策、生態系を基盤とした減災・防災(Eco-DRR4)等の社会的課題に対するアプローチや、グリーンインフラストラクチャー等のインフラに関するアプローチ、人と自然の相互利益を追求した生態工学に関するアプローチ等があります。
 このようなアプローチは、人間の幸福および生物多様性による恩恵を同時にもたらすものであり、私たちは、これらの社会課題に対する解決策がデザインに含まれていくことを大切にしています。
 自然環境等に関わるデザインにおいて、社会課題への対応が多岐にわたり、困難さを増しているなか、NbSの考え方に基づいたデザインアプローチが求められていると考えます。
1)IUCN(2021):自然に根ざした解決策に関するIUCN世界標準の利用ガイダンス―自然に根ざした解決策の検証、デザイン、規模拡大に関するユーザーフレンドリーな枠組み.初版(監訳:古田尚也、翻訳:文蔵沙樹)



地域性種苗と造園空間

 地域性種苗とは、『「地域性系統の植物」の種子及び苗並びに当該種子から育てた苗』1)であり、ランドスケープにおいて地域性種苗を導入する主な目的としては、生態系、種、遺伝子の3つのレベルにおいて生物多様性の保全を図ることにあります。地域性種苗はランドスケープデザインにおいて、生命を尊重した欠かすことができない素材といえます。
 地域性種苗を用いることにより得られる効果には、生物多様性の保全に寄与することに加えて、地域特有の独自の景観を形成することができます。さらに植物材料の中でも希少性がある地域性種苗を活用したデザインにより、造園空間の高付加価値化を図ることができます。
 副次的な効果としては、地域性種苗の導入は一般的な植物材料の導入に比べて技術面や材料調達段階において対応すべき事項が多いことから、のり面緑化工等の造園工法や材料に関わる技術開発を促進する効果や、材料調達段階で通常と異なる事業体制を構築することが求められる場合があることから、協働を促す効果等があります。
  地域性種苗は、地域性系統の植物という材料性質があることから、植物材料の寸法や規格に加えた植物材料の品質に関わるものです。私たちは、造園空間の品質を保つために地域性種苗を植物材料の標準的仕様として考え、プロジェクトに向き合っています。
1)環境省(2015):「自然公園における法面緑化指針 解説編」、p.3